技術めいた何か

社会人になってしまった

2023年の備忘録と2024年の抱負

こんにちは @prprhytです。 2023年の備忘録をまとめつつ、2024年の抱負を書きます。 2023年は東京を離れたり、博士後期課程に進学するなど生活に大きな変化がありました。

そういった近況報告と数年後に初心にかえりたくなった時に振り返れるように筆を取ることにしました。 なお、この記事のすべての文章は主観に基づいて書かれています。あらかじめご了承ください。

まず、2023年の振り返りを3行で整理すると以下の通りです。

  • 社会人3年目 (2021年春に修士修了&就職)
  • 東京を離れて自己研鑽として2023年4月に博士後期課程に進学しました(つまり業務ではない)
  • 昼間はセキュリティエンジニア、朝と夜は博士後期課程で応用暗号学分野の研究をしています

以下は詳細です。2023年度はまだ3ヶ月ほどありますがここまでの時点での振り返りを書いておきます。

社会人2023の振り返り

3年目も引き続き、新卒で入社した企業の開発寄りのセキュリティエンジニアとして働いています。 参考: 21新卒セキュリティエンジニアの就活をした - 技術めいた何か

社会人としての振り返りは直接的な仕事の内容と関係ない、継続したいソフトスキルについてのみ記録しています(後述)。 仕事の内容についてはここに書くのは不適切なので、別の機会にアウトプットしていきたいと思っています。

博士後期課程2023の振り返り

ここでの博士課程は明記しない限りは社会人コースではない一般の博士後期課程(3年間〜)を指します。 また、具体的な大学名については書いていません。

研究について

2023年 4月から情報分野の博士後期課程に在籍しています。 修論共通鍵暗号プリミティブの安全性解析に関する研究でした。 一方で、博士後期課程で取り組んでいる主な研究分野は応用暗号学(Applied Cryptography)で、2023年は特に暗号プロトコルの安全性解析に注力していました。

なお2023年の研究業績は以下のとおりでした (括弧内は内訳)。

  • 査読付き論文誌: 1件 (主著1件)
  • 研究会(査読なし): 4件 (主著2件、共著2件)
  • 受賞: 2件 (主著2件)

修士修了(2021)から博士課程進学(2023)までの間の2年間についても業務時間外で研究や論文執筆をしていたのが実を結び、 博士課程の1年目で論文誌の採録と2件の表彰をいただけました。 主著者としてのオーサーシップを持って取り組みましたが、 共同研究者の皆様、前指導教員、現指導教員の指導のおかげで良い研究ができたと感じています。この場を借りて改めてお礼申し上げます。

現在の所属研究室

現在の指導教員は前指導教員の紹介で私が学部生の頃から共同研究をしており、指導をいただいています。 博士課程の進学については2-3年前から先んじて前指導教員に相談していました。最終的には前指導教員の勧めもあって現在の指導教員の研究室へ進学する運びになりました。

そういった経緯もあり、修士時代とは別の大学で過ごしていますが前の研究室とも協業したり、後輩の研究のサポートを継続しています。 良い縁は大事にしていきたいので、現研究室での研究や会社業務の負担にならない範囲で続けたいと思っています。

職場への進学の説明

職務を遂行する義務があるので、事前に職場の関係者への説明、上司(とその上司 etc... ) への説明を済ませ、許可を得た上で受験をしました。 なお、進学については上司や同僚から反対はされず快く応援していただきました。

自己研鑽として進学

自己研鑽としての進学なので研究は全て所属企業の業務とは関係ない形で実施しています。 業務時間外の個人的な活動なので当然ですが、入学金や学費などの進学にかかる費用は全て自身の財布から支払っています。

最近は企業が博士課程の学生や従業員の博士課程への進学を支援する場合もあるようです。1 2

私のように時間もお金もプライベートから捻出する場合は中々にハードです。 特に時間が足りないです。

そのため、博士後期課程に進学することを考えている社会人の方は金銭的な部分よりもライフスタイルが研究にマッチするか事前に考えることをお勧めします。 あるいは企業から業務時間の一部を研究使用可能などの時間的部分の支援があれば進学のハードルは下がるかもしれません。

一方で、自己研鑽として進学することはデメリットばかりではなく、2つのメリットがあると私は感じています。

比較的自由にテーマを設定できる: 基本的には会社業務として研究を実施するよりは自由にテーマの設定ができる可能性があると思います (予算、人員などの大学研究室側の都合で自由に選べない可能性はありますが)。 ただし、特に業務と隣接した分野に取り組む場合は、企業の知的財産を侵害しないように気を付ける必要があります。 そのため、場合によっては所属企業と大学研究室の両方に相談した上で共同研究契約を結んだ方が良い場合もあるかと思います。

その点をクリアできれば所属企業とは異なる環境で業務とは違うことにチャレンジする良い機会になると思います。

博士取得後の就業に関する縛りがない: 企業や支援制度によって有無や支援に関するルールが異なるため具体例への言及はしません。しかし、企業からの支援を受ける場合は博士号の取得後の就業に関する規約が存在する場合があります (取得後N年以内に離職する場合は支援金の返還が必要とか)。 私自身は自己研鑽として100%プライベートとして取り組んでいるのでそのような縛りを気にしなくて良く、キャリアを考える時に気持ちが楽だと感じています。3

このようなメリットの一方で以下のようなデメリットが存在します。

学会出張に有給休暇を使う必要がある 研究活動は会社業務ではないので自明ですが、博士課程としての学会出張やワークショップ、合宿への参加は全て有給休暇を使用しました。 特に2023年は引っ越しや病欠のためにも数日の有給を使ってしまったため、年末時点の有給の残り日数はごくわずかでした。 2025年は博論の執筆がある予定なので、2024年の有給は計画的に使い、繰り越せるようにするつもりです。

仕事の予定と大学院の予定が衝突した時の調整が難しい これも同様に自明ですが、一方の都合でもう一方をリスケするのは簡単ではありません。 私の場合は幸い、会社の打ち合わせが午前中に入る可能性はほとんどないので大学院の予定を午前中に入れることで予定の衝突を回避しています。 ただ、稀に衝突することがあります。その場合は可能な限り会社業務の都合を優先しています。

メンタルや体調不調時の影響が大きい 研究テーマを業務と異なる内容に設定して、分けて実施していたとしても自分自身は一人で同一人物です。 つまり、メンタルや体調の不調は研究と業務の両方に悪影響を及ぼすわけで、最悪の場合は共倒れの危険があります。

私自身は2023年の9月末にCOVID-19に罹患してしまい、このリスクをよく理解できました。 幸い、仕事の締め切りの問題はありませんでした。 その一方で博士課程の半期の研究報告書の締め切りの直前でした。 高熱で大変苦しい状況でしたが、私の場合は対外発表済みの研究があり、それさえまとめれば良かったことが幸いし、事なきを得ました。 報告書の提出後は快復するまでは仕事も研究も止めたのですが、仕事だけしていた2022年と比べると寝込んでいる時間を1.5倍くらい損している気持ちになり4、 精神衛生上はとてもよくなかったです。

2024年も継続したいこと

継続的な文献のサーベイドキュメンテーション

知財が関係ない執筆や文献調査のソフトスキルを伸ばして研究と業務でうまく活用できました。

修士時代からこの類のタスクは継続していましたが2023年は特に効率的に実施できたと思います。 改善できた理由は推測ですが、 博士課程で研究を進めるにあたってより多くの文献を読むようになり、1週間あたりの文献調査の経験値が2022年比で倍以上に増えたことが一番大きいと思います。 また、文章の執筆や校正に関するソフトスキルについては、指導教員と共同研究者との論文執筆、条件付き採録になった論文誌の修正作業を通して多くの学びを得ました。 それらをうまく仕事でのドキュメンテーションを含む文章の執筆に反映できたと感じています。

フットワークを軽くすること

機会があれば積極的に出社する: 進学のために会社のある東京を離れてしまいました。 入社がCOVID-19の流行と被ったこともあり、仕組みが整ったおかげで在宅でも仕事はできます。 ただ、私は特に大学研究室に行くようになってから、オフラインのやり取りが モチベーションの維持にプラスに働くと感じるようになりました。 また、私の周りではオンラインだと雑な雑談が発生しないことが多く、Slackで絡む人が固定されがちでした。 そういったこともあり、職場の空気感を知るために仕事の用事や職場の懇親の機会があれば積極的に出社するようにしていました。5

そういった気持ちもあって、2023年は職場の人を知り、自身の近況を知らせる機会を大事にしていましたがこれは2024年も継続していきたいです。

ワークショップ、合宿への参加: 修士号を取得した出身研究室からの誘いで研究室合宿や、複数大学合同のワークショップへ参加しました。 どちらも学生時代には毎年参加していたイベントなのですが、2021, 2022年は感染症の流行の都合で中止になっていました。 学部や修士の学生とも研究の話ができて有意義な時間を過ごすことができました。 特にワークショップは久々にお会いした他大学の先生方に近況のご報告をして、研究の話をでき大変楽しい時間でした。

飲み会への参加: 決して体育会ではないですが、飲むのは好きなので呼んでください。 (都合が合えば)飛んでいきます。

博士課程の研究時間の確保

12月は仕事が忙しくない時は平日は以下のタイムラインで一日を過ごしていました。 2024年も体を壊さない範囲で継続していきたいです。 所属している博士後期課程はほとんど授業がないので大学院の時間のほとんどは研究をして過ごしています。

  • AM 6:00: 起床。
  • AM 6:30: 業務開始。
  • AM 8:00: 業務中断、大学へ移動(or自宅で)研究開始。
  • AM 12:00前後: 研究中断後、帰宅。業務再開。
  • PM 7:00前後: 業務終了、夕食ののちに研究再開。
  • PM 12:00前後: 就寝。

ある時期の数週間は1時-5時の4時間睡眠をしていたのですが、 パフォーマンスが低下した上に疲れが顔に出ていたらしく、まわりから心配されたのでやめました。 体を壊しそうなので2024年はしっかり寝たいです。

2024年に新しく頑張りたいこと

運動と体力作り

運動していない+ストレス+飲酒で体重が増え、体力が落ちてしまいました。 元々が痩せ型だったのでむしろ健康説は...ないです。健康な肉体を得るべく、なるべくランニングをしようかなと思っています。 また、目標の設定があった方が良いと思いマラソンに応募する計画を立てています。

英語学習を再開する

所属企業では運良く多国籍のチームに所属しており語学学習のモチベーションは比較的維持しやすいです。 しかし、仕事の英語には慣れてきた6ことと博士課程の研究に時間を割いていたこともあって2023年はほとんど英語学習に時間を割り振りませんでした。 そのためか、仕事以外で同僚と長時間話す機会があったときに思ったよりも上手には話せませんでした。 特に日常会話の定型表現を忘れていたり7、日常会話で使いそうなフレーズを新しく覚えていない気づきがあり、 リハビリも兼ねてDuolingoを始めています (ステマでは無いです)。

新規分野の勉強とテーマの発掘

もちろん暗号分野の中での新規分野/テーマです。 一応、共通鍵暗号プリミティブ→暗号プロトコルを経験していますが、 博士人材としてこの先、生きのこるにはこの訓練を繰り返し行う必要があると感じています。 しかし、テーマを変えすぎると博論をまとめる時に大変だろうと予想しているので、慎重に考えているところです。

おわりに

進学の動機や経緯の詳細は全く書いてませんが、それは2022年の出来事なので別の機会に。 博士課程の研究や社会人学生生活について詳しく聞きたい人がいたら 学会やイベント8で捕まえてください。

ちなみに、Twitter(X)では研究の話はしてません。酒と猫の話をしています 🍺 🐈


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  3. この感想は転職の意思表示ではありません。念の為。
  4. 仕事が止まって有給も消える上に研究は進まないため。
  5. つまりは飲み会の機会があれば行っていたという話です。
  6. 個人の感想です。同僚や後輩が英会話を頑張っていて少し焦っています。
  7. 酒で揮発しないくらいに定着させたい。
  8. 最近はITのイベントへほとんど参加してません...